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2.応力の定義|材料力学

FEM構造解析において、解析対象の強度や剛性を評価する場合、その指標として応力や変位等で評価することが多いです。ここでは構造物の強度を評価する場合のもっとも一般的な評価指標である応力に関して説明します。

FEM構造解析では単に応力といっても、主応力ミーゼス応力成分応力などさまざまな見方をすることができるため、これらについてしっかり理解しておかないと材料強度を正しく評価することができません。

応力とは?

まず応力の最も基本的定義を下式(2-1)に示します。

応力の定義

 ・・・・(2-1)

σ:応力、F:荷重、A:荷重が作用している面の面積

言葉で言えば、単位面積あたりに作用する力となります。荷重が作用面に対して垂直方向であれば垂直応力、作用面に対して平行であればせん断応力と呼びます。せん断応力はτで表記することもあります。定義としては非常に簡単ですね。

材料力学の本には図2-1のように丸棒を単純に引っ張った場合の例が多く掲載されています。このような丸棒を単純に引っ張った場合、内部の応力は一様に分布するので、このようなマクロ的な見方をしても問題ありません。

図2-1.応力の定義

では複雑な形状をした部材に多方向から力が加わった場合にはどのように考えるのでしょうか。この場合、もっとミクロな見方が必要になります。

応力テンソル

応力テンソルの定義

図2-2に四角い立方体のブロックを記していますが、これは部材内部の非常に微小な領域をブロック状に切り取った状態と考えてください。

図2-2.応力テンソル

この各面に働く応力を同様に定義していきます。 すでに応力状態を書いていますが、丸棒の場合との違いはσxxやσxyなどのようにσの後にxxやxyなどの添え字が付いています。1番目の添え字は考えている面を表し、2番目の添え字は力の方向を表します。面は考えている座標軸に対して垂直になるような面で定義されます。

例えばσxyの場合は、x軸に垂直な面に対してy方向に力が働いている状態で発生する応力となります(この場合、せん断応力になります)。 図ではブロックの6面に対して3面しか記述していませんが、対称なので省略しています。

これを行列の形式で記述すると以下のようになります。

 ・・・(2-2)

このように書くと何かすごく複雑で難しい印象を受けますが、丸棒の場合となんら変わりません。ただ一度に考える面が増えただけです。これはテンソルとして定義され、全部で9成分あります。ここで、σxyとσyxなどのように1番目の添え字と2番目の添え字が入れ替わった成分同士は同じ値になります。したがって独立なのは6成分になります。

この理由を図2-3で説明します。このような応力状態でも部材は静止していなければならないわけですから、力が釣り合っている必要があります。面に垂直な成分は完全に同値で向きが反対になります。問題はせん断成分ですが、これはブロックを回転させる方向の力が働きます。σyxでブロックを右に回転させる力が働きますが、これを回転させないための条件は、反対の方向に同じだけ回そうとする力を与える必要があります。したがってσyx=σxyになるのです。他の面も同様に考えることができます。

図2-3.応力テンソル
(z軸上からz-方向に見たところ)

この6つの独立な成分を持った応力は応力テンソルと呼ばれます。それぞれの成分(σxx、σxy・・)は成分応力と呼ばれます。FEMの構造解析の結果では、これらの成分応力も参照することができます。 FEM構造解析ではいろいろな応力の参照方法がありますが、この応力テンソルがそのすべての元になっています。応力テンソルから主応力やミーゼス応力などすべての応力を計算することができます。

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