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5.主応力|材料力学

主応力

応力テンソルは計算する座標系によって値が変わってしまいます。よって、工学的に意味のある座標系で応力を評価すべきです。結論から言えばその座標系が応力の主軸座標系となります。そして主軸座標系で計算した応力が主応力となります。

主応力はせん断成分が0になるように座標系をとったときの応力ということができます。つまり応力をテンソル表記したときのσij(i≠j)成分が0ということです。σii成分は値を持ち、これが主応力となります。また、その方向は主軸座標系の各軸に向いています。通常それらの3つの応力を値の大きい順に並べて、それぞれ最大主応力中間主応力最小主応力と呼びます。

座標系(x-y-z)で計算した成分応力

 ・・・(5-1)

せん断成分が0になる座標系(x’-y’-z’)で計算した応力(主応力)

 ・・・(5-2)

ここでσx’x’、σy’y’、σz’z’の値から一番大きいものを最大主応力(σ1)、中間の大きさのものを中間主応力(σ2)、一番小さいものを最小主応力(σ3)と呼びます。

さて、ここで上式をよく見るとσ’はσを対角化した行列となっています。実はこの主応力は、もとの座標系における応力テンソルの固有値であるのです。そしてそれぞれの固有ベクトルを1つにしてマトリクス構成にしたものは、元の座標系から応力の主軸方向への座標変換マトリクスとなります。これは主応力方向のベクトル表示の際に利用されます。固有値は振動解析でいうところの共振周波数や振動モードを計算するだけではなく、このような主軸変換の特性を利用して主応力を求めることにも利用されます。ちなみに慣性モーメントと主慣性モーメントとの関係も同じです。

図5-1.主軸変換

主軸変換の例を図5-1で説明します。図5-1の左側は完全にせん断応力のみが加わった状態でひし形に変形しています。これを見方を変えて、45°傾けてみます。すると図中ピンク色をした応力による変形と区別することができなくなります。これが主応力になります。一見完全なせん断応力状態でも45°傾ければ、単純な上下方向引張り、左右方向圧縮状態と同じことになるのです。

このように部材に多方向から複合的に荷重が加わった状態においても、主応力を求めることにより単純な直交する引張り圧縮の成分応力に集約することができます。図5-1の例では2次元で考えていますが、3次元に展開しても同様で、直行する3軸の引張り圧縮成分のみに集約することができます。

主応力と固有値の関係

先に主応力は固有値であると書きましたがその理由を説明します。

主応力はせん断成分が0となるように、つまり面に垂直方向のみの応力だけになるような座標系を選ぶことで求められると説明しました。これを数学的に求めるには固有値の概念を用います。

 応力テンソルの性質の項でコーシーの公式を紹介しましたが、この式では応力テンソルに参照したい面の法線方向を表すベクトルを乗じると、その面に働く応力ベクトルが求められます。このときもし、この応力ベクトルがせん断成分を含まないとすれば、応力ベクトルの方向は、面に垂直方向になるはずです。ということはつまり、法線ベクトル{n}と同じ向きになるということです。これを式に表すと式(5-3)のようになります。

 ・・・(5-3)

向きが同じなるだけで大きさは異なるのでλの乗数が付いています。この式をよく見ると固有値の定義式と同じになることがわかります。したがって、λが固有値で、{n}が固有ベクトルとなります。λは、以下の応力テンソルの特性方程式を解くことで求めることができます。

 ・・・(5-4)

このように主応力を求めることは、固有値を求めることと同じであるのです。これは慣性テンソルなどでも同様の考え方ができます。

引張りと圧縮

応力は部材が引張られる方向に力が加わったとき正値となり、圧縮させる方向に力が加わったとき負値となるように定義されています。ここで主応力で最大主応力は引張り、最小主応力は圧縮であると誤解する場合があるので注意してください。最大、中間、最小主応力は単に主応力を大きい順に並べてそう呼んでいるというだけです。最大主応力でも負値であれば圧縮です。逆に最小主応力でも正値であれば引張りとなります。

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